眠りに作用する睡眠物質を摂り、邪魔する物質は何かを知る

睡眠

睡眠物質とは

睡眠物質とは、睡眠欲求の高い動物の脳内や体液中に出現し、生理的睡眠を誘発あるいは維持させる物質の総称ですが、その候補として様々なものが挙げられます。

睡眠物質という研究論文を引用・参考にしています。

それが、プロスタグランジンD2、アデノシン、メラトニン、インターロイキンと腫瘍壊死因子(サイトカイン)、酸化型グルタチオンやビタミンB12やウリジンなどです。

プロスタグランジンD2

プロスタグランジンは生体膜に含まれるアラキドン酸より合成される一連の生理活性物質(ホルモン)の総称です。そのプロスタグランジンの一つであるプロスタグランジンD2(以下PGD2)は脳内において生産され、ラットやサルの脳内に投与すると自然な眠りを誘発します。ヒトにおいても、発熱・頭痛・筋肉痛などの後、眠気・激しい頭痛を主とする様々な神経症状が現れるトリパノソーマ感染によるアフリカ睡眠病において、病状の進行に伴ってPGD2レベルが100倍~1000倍に上昇することが報告されています。PDG2は内在性の睡眠物質の中でも最も強力な睡眠誘発作用を示す物質です。

アデノシン

アデノシンはアデニンにリボースが結合した化合物です。1970年代にイヌの脳室内へのアデノシン投与が睡眠を誘発し、カフェインがアデノシン受容体の拮抗薬として覚醒作用を示すことが証明されました。そのため、アデノシンは睡眠物質であるとされています。アデノシンは、細胞内においてリン酸化を受けATPに変換され、生体エネルギーの源泉となります。細胞外アデノシン量が増加すると、エネルギーが必要となり、睡眠によってATPの増加を促進させます。

メラトニン

メラトニンはトリプトファンを前駆体としてセロトニン、N-アセチルセロトニンを経由して構成されます。不眠の治療薬としてメラトニン産生能力を欠く不眠症患者にメラトニンを投与すると睡眠が誘導や質的な向上がみられます。メラトニンの分泌は、日光を浴びることで調整されます。日光が太古から時計の役割をしているからです。動物の昼行性、夜行性に関係なく、メラトニンの合成は夜間に上昇し昼間に減少します。従って、メラトニンは厳密な意味では睡眠物質ではなく、時計物質と呼ぶべき物質となります。

インターロイキンと腫瘍壊死因子(サイトカイン)

インターロイキン1β(IL-1β)と腫瘍壊死因子(TNFα)は炎症反応や免疫反応において重要な働きをするサイトカインです。細菌やウイルスによる感染症の際に誘発される睡眠はIL-1βやTNFαの作用を介して起きると考えられています。その理由として以下の5つがあります。①IL-1βをウサギやラット、マウス、ネコ、サルに投与すると徐波睡眠が増加します。②断眠中に脳幹部や視床下部においてIL-1βのmRNA量が増加します。③ラットのIL-1β mRNAレベルは日周期リズムを有し、睡眠期間である日中に最高になります。④リポ多糖などIL-1βの発現を誘導する物質は徐波睡眠を誘導します。⑤内因性IL-1βの作用を中和抗体等で阻害すると自発睡眠が抑制されます。そしてTNFαも動物実験において睡眠を誘導するようです。

酸化型グルタチオン、ビタミンB12、ウリジン

断眠ラット脳からの物質の抽出を行い、得られたものが酸化型グルタチオン、ビタミンB12、ウリジンでした。そして、睡眠誘発作用を見出しています。
グルタミン酸はタンパク質を構成するアミノ酸の一つで、興奮性の神経伝達物質として作用します。そして、酸化型グルタチオンは、グルタミン酸の受容体への結合を阻害し、興奮性神経系を抑制することにより睡眠を誘発しているとしています。
ビタミンB12はグルタミン酸の合成を抑制することが報告されており、酸化型グルタチオンと同様に興奮性神経系を抑制することで睡眠を誘発すると考えられています。
ウリジンはGABA受容体の低親和性部位と結合し、抑制性神経系を活性化することで睡眠を誘発すると考えられています。

コメント

  1. […] 鍼灸治療は局所の血流増加、筋緊張の緩和、免疫の活性化のみならず、脳内ではモルヒネ様物質の分泌を促し、鎮痛効果を発揮させます。また、前頭葉の活動や自律神経の調整に関与し、幸せホルモンや愛情ホルモンとして知られるオキシトシンやセロトニンの分泌を増加させるなど、不安やストレス軽減にも寄与することが明らかになっています。 まず、鍼灸治療とは皮膚を介在した微小刺激です。皮膚は発生学的にも脳と同じ外胚葉由来で、皮膚からの刺激や情報は脳へ伝達され、脳を活性化することが知られています。その中でもツボ(経穴)やトリガーポイントといった反応点に刺激を加えると更なる治効を示します。ツボへの刺激は、神経や圧力の変化を感知し反応する圧受容器へ働きかけ、血管を拡張させることで血流の増加とともに筋緊張を緩和させます。また、鍼灸では末梢で微小な損傷を起こすことで睡眠物質であるアデノシンの放出を誘発し、局所においては鎮痛効果を有することが明らかになっています。 […]