妊婦さんの睡眠問題

睡眠

妊娠すると内分泌的な変化だけでなく、身体的そして心理的変化も睡眠に影響を及ぼす

妊娠すると、お腹の赤ちゃんを育てるために母親の体に変化が起きます。イライラしたり、涙もろくなったり、落ち着きがなくなったり、気分不安定などの感情面に変化がみられます。だるさ、感覚過敏や思考が変化したり、睡眠障害が認められます。他にも、生理がこなくなったり、お腹が張ったりと変化は様々です。これらは妊娠による内分泌的な変化(ホルモンの変化)や身体的変化(お腹が大きくなったり、体重が増えたり)が影響しています。しかし、睡眠研究の調査の大部分が男性に関して行われていて、月経周期や妊娠に関連する睡眠障害の訴えの多い女性に関する研究は少ないのが現状です。

妊婦は睡眠上の問題を抱える人が多い

本邦における妊婦の睡眠問題に関する疫学的研究という研究論文を引用・参考にしています。

日本全国の産科医療機関(協力してくれたのは260箇所)を受診した妊娠女性(回答数は16528人)に、診療待ち時間に回答してもらいました。ここでは、妊娠女性についての情報と睡眠についての情報を紹介します。妊娠女性については妊娠状況(妊娠月数や妊娠回数)を調査しました。次に睡眠については、①自分の睡眠に対する自己評価②入眠障害の有無③中途覚醒の有無④早朝覚醒の有無⑤睡眠時間⑥昼間の眠気の有無の6項目です。調査の結果、妊娠月数が長くなると入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、昼間の眠気が生じやすく、睡眠に問題が生じていました。妊娠回数に関しては妊娠回数が多くなるほど、自己の睡眠の評価が下がり、睡眠時間も短くなっていました。そして自己の睡眠の評価が下がる因子として妊娠回数の多さ、仕事をしていること、飲酒していること、喫煙していることが挙げられ、逆に7時間以上睡眠をとっていたり、昼寝をすると自己の睡眠の評価は高くなっていました。また、妊婦と一般女性を比較した場合、妊婦は睡眠上の問題を抱える割合が高い傾向にありました。

妊娠月数と睡眠の関係

下の図は妊娠月数と睡眠の関係を調査した結果です。つまり、妊娠してからの時間経過で睡眠はどうなるかということです。論文では妊娠月数と、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・昼間の眠気との間に関係があるとし、妊娠月数が長いと睡眠状況は悪化しているとしています。特に入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒はわかりやすいです。妊娠月数が長くなってくると、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒といった良くない睡眠の症状が表れる妊婦の割合が増加します。例えば、入眠障害では、まったくないの回答は月数が大きくなるにつれて減少し、常にあるが増加しています。入眠障害という寝つきが悪い症状が起きる妊婦の割合は、妊娠期間が長くなるにつれて増加するのです。中途覚醒も早朝覚醒も同様の結果です。

妊娠回数と睡眠の関係

下の図は妊娠回数と睡眠の関係を調査した結果です。つまり、1回目の妊娠時と2回目や3回目の妊娠時で睡眠に変化はあるのかということです。論文では、妊娠回数と(自己の)睡眠の評価・中途覚醒・早朝覚醒・昼間の眠気・睡眠時間は関係があるとしており、妊娠回数が増加するにつれて、睡眠状況は悪化しているとしています。特に分かりやすいのが、睡眠の評価と睡眠時間です。初回の妊娠時では6時間も睡眠できない妊婦の割合が18%ですが、3回目になると25%にまで増加しています。

妊婦と一般女性との睡眠の比較

下の図は妊婦と一般住民女性との睡眠を比較したものです。本調査と表記されているのが妊婦です。ここでは自己の睡眠の評価と睡眠時間、そして睡眠障害(入眠障害や中途覚醒など)について比較しています。自己の睡眠の評価において、充分とれていると回答した女性のうち、妊婦(本調査)が30%で一般女性は17%でした。自己の睡眠の評価においては妊婦のほうが高いようです。睡眠時間において、6時間未満の割合は妊婦が20%に対して一般女性は31~34%でした。睡眠時間においても妊婦のほうが十分にとれているという結果です。しかし、入眠障害や中途覚醒などの睡眠障害では、一般女性の割合は一桁台ですが、妊婦の割合は二桁台になる項目もあり、質の悪い睡眠になっていると考えられます。

これらの結果から分かることや考えられること

一般女性よりも妊婦のほうが入眠障害や中途覚醒、早朝覚醒については発生する割合が多くなっており、また、妊娠月数が長くなると入眠障害や中途覚醒、早朝覚醒といった睡眠障害の割合が増えています。ここではデータを示していませんが、昼間の眠気については妊娠初期に出現し、妊娠の進行とともに減少します。こういった背景には、様々な要因が考えられます。
まず第一に内分泌的要因(ホルモンバランスの変化)が挙げられます。エストロゲン(女性らしいからだを作るホルモン、卵胞ホルモン)やプロゲステロン(排卵直後から分泌量が増える、妊娠の準備のためのホルモン、黄体ホルモン)の値は上昇し、コルチゾールの値も高くなります。これらの変化が睡眠に影響を与えていると推測されます。また、胎盤機能の変化も睡眠上の問題に関与している可能性があります。実際、プロゲステロンの変動が過眠症状の出現に関与しているとの報告があり、さらにホルモンリズムの変化が妊婦の睡眠障害に認められるとの報告もあります。
次に第二の要因として身体的変化が挙げられます。妊娠して月日が経つと胎児が成長し、お腹の圧迫感が増します。そうすると頻尿や便秘、息苦しさ、胎動、腰痛を感じるようになります。それらが睡眠上の問題の要因となるのです。なんと半数もの妊婦が腰痛を感じているというのです。
そして第三の要因として精神的変化が挙げられます。分娩、出産が近づくと不安や心配などを感じるようになります。出産とはやはり大変で不安になることは当たり前ですよね。

妊婦の睡眠時間に関して、妊娠時における6時間未満の割合を見ますと、1回目では18%ですが、2回目では21%、3回目では25%となっております。6時間未満という短い睡眠時間しか確保できていない妊婦の割合は、妊娠回数に応じて増加しているのです。この原因として、妊娠2回目以降では家庭内に手のかかる年齢の幼児がいることが推測されます。つまり、妊娠2回目以降の妊婦さんに対して、周囲の人は「一度妊娠を経験しているから慣れているだろう。」と考えるのではなく、「妊娠中に幼児がいて大変だ。支援すべきだ。」と考えるべきなのです。

妊娠は著しい生理的変化と身体的変化、そして精神的変化が起きています。そのため、妊婦は疲労しやすく、充分な休息・睡眠が必要です。充分な休息が取れている妊婦とそうでない妊婦を比較すると、休息が不十分な妊婦は疾病に罹患しやすく、低出生体重児を出産する率が高いと言われています。そして胎児の体の発育に最も適しているのは成長ホルモンが最も分泌される睡眠中ですので、胎児が健全に成長するためには妊婦が良好な睡眠を十分にとることが非常に重要です。

妊婦さんを助けてあげてください

支援体制の整備は必要ですが、周囲の人、特に旦那さんには気を遣ってあげてください。最も身近な存在で、妊娠以降も長期間を共に過ごすからです。問題は妊婦の気持ちがわからないことです。何か助けになるようなことをしたいと思っているのですが、どうしていいのかが分かりません。私もそうでした。会社の女性に、「妊娠時は奥さんに気を遣ってあげてね。でないと一生言われるよ。」と助言を受けました。家事(炊事以外ですが)を積極的にやって、入院時には仕事終わりに着替えを持って行ったり、頑張ったつもりでしたが、喧嘩になると妊娠時にあまり助けてくれなかったと言われます。問題は家事の量ではなく、精神的に寄り添うことが足りなかったのかもしれません。常に大丈夫?苦しくない?と声をかけるべきだったのかも・・・。今でも答えは分かりませんので、奥さんは旦那さんにはっきりとしてほしいことを伝えてあげてください。私の場合は、遠方から妻のお義母さんが来てくれたことが幸いでした。妊娠時は精神的にも肉体的にも本当に辛いようです。

こんなのありますけど

妊娠中の寝る体勢としてよく紹介されるのが、シムスの体位です。体の左側を下に向けて横向きで寝ころびます。体の構造上、左側を下にすることで胃酸の逆流を防ぐことができるというものです。またややうつ伏せのためにお腹の重さを軽減してくれます。ただし、楽な体勢は人それぞれ、その時によっても異なりますので、楽な姿勢を見つけてください。楽な姿勢を補助するために、抱き枕はどうでしょうか。中には妊婦さんのための抱き枕があります。

下の商品は80cm×140cmの大きめの抱き枕です。カバーが交換出来て衛生的です。交換用カバーも別途売られています。ホルムアルデヒドが使用されておらず、乳幼児に対して安全です。ホルムアルデヒドはシックハウス症候群の原因の一つで、粘膜への刺激を中心とした毒性があります。




上の商品が大きすぎるという方にはこんなのがあります。68cm×150cmです。こちらもカバーは取り外して洗うことが出来ます。

妊婦さんが安らかに眠れる環境を作ってあげて、安心して眠ってほしいですね。

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