運動するメリット
睡眠において運動するメリットは疲労をためるということです。睡眠には、概日リズム機構ともう一つ、恒常性を維持するホメオスタシス機構に関係があると考えられています。概日リズムというのは、人が約24時間周期で繰り返されるリズムのことです。体温の上昇や下降、ホルモン分泌なども概日リズムに従って行われています。動物は怪我や病気、疲労すると修復・回復することが必要になります。休息して元の状態に戻そうというのがホメオスタシス機構、つまり恒常性維持機構です。運動すると疲労が溜まるので回復が必要となり、入眠しやすくなることが予想できます。しかし、研究の結果では一概にそうとは言えないのです。
遅い時間あるいは早い時間の運動は、リズムを遅らせる
生体機能変化による日内リズムの修飾-特に運動・睡眠と日内リズムの関係-という研究論文を引用・参考にしています。
運動負荷は生体リズムにかなりの影響を及ぼすとされています。夕方、さらに遅い時間帯での運動によって生体リズムの遅れが報告されています。また、早朝の4時から7時に運動においても、1時間~2時間の遅れが報告されています。
以下の記事はNocturnal exercise phase delays circadian rhythms of melatonin and thyrotropin secretion in normal menという研究論文を引用・参考にしています。
300lux以下の部屋で早朝4時~7時の体温が最低になる時間帯に、3時間の運動を実施しました。運動は、15分60%VO2max、15分40%VO2max、6分休憩を5セットの計180分で、自転車エルゴメーター・腕クランキングです。その結果、非運動群と比較して運動群は、実験1日目でメラトニン分泌とサイロトロピン分泌の開始時間において、1~2時間の時間的遅れが観察されたのです。メラトニンは、寝る前から分泌されだすホルモンで、眠りを誘発するホルモンだと言われています。サイロトロピンは、甲状腺刺激ホルモンで、甲状腺ホルモンの分泌を促します。図の上側が非運動群で、下側が運動群です。また、左側がメラトニン分泌で右側がサイロトロピン分泌です。非運動群と運動群のメラトニン分泌を比較すると、メラトニン分泌開始を意味する矢印は運動群のほうが後ろになっています。つまり、早朝の運動は眠りにつく時間を後ろにずらし、眠りにくくする可能性があると言えます。
昼間の身体運動はリズムを早めるのでおすすめ
では、昼間の時間帯に運動するとどうなるのでしょうか。眠る時間を早めることができます。
以下の記事はPhase-advance shifts of human circadian pacemaker are accelerated by daytime physical exerciseという研究論文を引用・参考にしています。
被験者は、実験前に7日間深夜に眠れるように慣れさせおき、10luxの薄暗い条件下で15日間生活しました。そして被験者を、運動する組と運動しない組に分け、運動する組は3日目から運動を開始しました。
運動は、自転車漕ぎ運動とクランキング運動を午前と午後に行い、心拍数140泊/分の強度で15分間の運動を15分間の休息を挟んで4セット行いました。午前に自転車漕ぎ運動を行った場合は午後にクランキング運動を行い、午前にクランキング運動を行った場合は午後に自転車漕ぎ運動を行いました。因みに心拍数140というのは割ときつめの運動です。20歳では楽だと感じるかもしれませんが、50~60代ではかなりきつく感じるでしょう。その結果、メラトニン分泌のピーク値は、運動する組では1日目-8日目において0.88±0.53時間早まり、1日目-14日目においては1.60±0.42時間も早まったのです。一方、運動しない組では遅くなっていました。
下の図は、運動するグループと運動しないグループのメラトニン分泌リズムを表した図です。メラトニン分泌リズムにおいても8日目(表中のB)には、運動する組(●)は運動しない組(○)よりも分泌時間が早まっていることが読み取れます。
早い時間に眠りたいのであれば、運動は昼間に行うとよいでしょう。
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