深部体温を下げ、皮膚温度との差を縮めると劇的に寝入りやすくなります

入浴の方法を変えるだけで劇的に寝付きやすくなります

入浴の方法を変えるだけで劇的に寝付きやすくなります
就寝したい時間の2時間前に入浴を行い、入浴は40℃で30分間行ってください。ただし、体の芯まで暖まれば良いので、のぼせるようなら時間は短くしてください。入浴によって一時的に体温を上げ、その後に起こる深部体温の低下が皮膚温度との差を縮めることになるので、眠りやすくなります。

ヒトの体温調節と睡眠という研究論文を引用・参考にしています。

深部体温は概日リズムによって、昼間に活動するヒトでは昼間に高く、夜間は低い傾向にあります。
また、深部体温が高いと体内の酵素反応が活発になり、エネルギーが生成されます。つまり、活動するために体温を上げていると言えるでしょう。
逆に深部体温が低くなると酵素反応は抑えられ、代謝も下がり、脳を含む全身は休息状態になります。
寝付く時の深部体温が低ければ寝付きにかかる時間(入眠潜時、下表のおいては睡眠潜時)は短くなることが下の図からも分かります。
深部体温の24時間周期で起こる変動は、皮膚からの熱放散によって制御されています。つまり熱放散によって深部体温が下がると睡眠が誘発されるのです。「赤ちゃんの手足が温かくなるのは眠たいサイン」というのはこの現象です。

以下の記事はWarm feet promote the rapid onset of sleep.という研究論文を引用・参考にしています。

この発見に続いて冷え性で手足が冷たくなりやすい人は、寝付きにかかる時間が長くなることが報告されています。末梢皮膚温度の低い冷え性の人は、熱放散がうまくいかず、深部体温を下げることができないので、睡眠への移行が妨げられると解釈できます。気温が高かったり、湿度が高いと眠りにくいのは、皮膚から熱が逃げにくいからです。

以下の記事はSleeping with an Electric Blanket: Effects on Core Temperature, Sleep, and Melatonin in Young Adultsという研究論文を引用・参考にしています。

さらに、睡眠中の環境温度と睡眠の量や質が密接に関連します。電気毛布などで睡眠中の家具内温度を高く保つと、中途覚醒が多くなり、睡眠が不安定化することが報告されています。熱放散が妨げられると深部体温の低下が不十分となり、睡眠が不安定化するのです。
このように、体温と睡眠の密接な関係から、就寝前の入浴や足湯で睡眠を促進する方法が考えられています。適切な条件の入浴は睡眠を改善できるという報告があるのです。

以下の記事はCold feet and prolonged sleep-onset latency in vasospastic syndromeという研究論文を引用・参考にしています。

就床の2時間前に、30分間40℃の胸中間部までの入浴を調査した研究があります。下の図は、今まで(基準)と、就寝2時間前に30分間40℃の胸中間部までの入浴をした場合の比較を表しています。図の上側が睡眠効率、下側が中途覚醒のデータです。睡眠効率は眠っている時間÷布団で横になっている時間で計算できます。つまり寝付くまでの時間が短ければ睡眠効率は上がります。中途覚醒時間は、眠りについたが途中で起きてしまった時間です。中途覚醒は時間が短いほど良い、というか、中途覚醒自体ないのが最も良いですよね。図を見てみますと、このような条件での入浴は睡眠効率を上昇させます。つまり、寝付きにかかる時間を短縮させ、さらに中途覚醒の時間を減少させることが分かったのです

以下の記事はPassive body heating ameliorates sleep disturbances in patients with vascular dementia without circadian phase-shiftingという研究論文を引用・参考にしています。

線維筋痛症の女性6名に対して、18~20時に36℃の入浴を週5回、3週間に渡り行った報告が実験があります。その結果、初日においてREM睡眠潜時の短縮、深睡眠の増加がみられました。15回終了時には覚醒時間の減少、睡眠潜時の短縮、REM睡眠潜時の短縮、睡眠効率の増加、深睡眠の増加がみられました。さらに、実験終了3週間後の調査においてもこの効果は持続していました。
足浴により効果が得られた研究もあります。婦人科領域の腫瘍で化学療法中の女性患者18人に対して、毎晩足浴を行う群と行わない群に分け、6ヶ月間の自覚的睡眠評価を観察したところ、毎晩20分ずつ41~42℃の足浴を行った群に自覚的な睡眠の質の改善がみられました。
これらの結果から、皮膚温度や深部体温の一過性の上昇を伴う入浴は、体温中枢に対する刺激効果、それに続く皮膚末梢血管の血流上昇などによって結果的に熱放散の増加をもたらし、睡眠を促進したと考えられます。
また、炭酸の入浴剤は血管拡張作用があるみたいなので、入浴の効果がさらに高まるとされています。

実際にやってみました

実際、私の3歳の子供でも試してみました。40℃のお風呂を用意し、一緒に入ります。長く浸かってもらうためにおもちゃを持たせて入るのですが、あまり長くは浸かることができません。のぼせるので嫌がります。
湯舟に入っている時間は10分程でしょうか。肩まで浸かっている時間は3分程です。服を脱ぎだして、風呂から出て服を着るまでは30分程でした。
子供の体は赤くなっていたので、風呂から出た直後は体は温まっていたと思います。
私は風呂からでて1時間半~2時間後に眠気を感じました。その時、まだ20時半でした。しかし、2時間後の子供は普段と様子は変わりないと感じました。
子供は体が小さい分、深部体温の維持ができずに、もっと早くに熱放散してしまっているのかもしれません。もしかしたら入浴後1時間程で眠気を感じていたのかもしれないと思いました。
個人差はあると思いますが、大人に効果はありましたので試してください。あと、水分補給も忘れずに!

入浴以外にもこんな方法が

入浴以外には足浴やミストサウナ、アイススラリーを飲むという方法もあります。

足浴の効果

以下の記事はEffects of Bathing and Hot Footbath on Sleep in Winterという研究論文を引用・参考にしています。

40℃の湯に20分間入浴した場合と、42℃の湯に30分間足浴した場合と、入浴無しの3条件後に、気温10℃の環境で長袖パジャマを着用した青年女性で比較した実験があります。入浴無しに比べて、40℃の湯に20分間入浴した場合と、42℃の湯に30分間足浴した場合では入眠潜時が短縮でき、睡眠段階3が増加しましたが、睡眠段階4は減少しているので、徐波睡眠という観点においては影響はありません。ただ、40℃の湯に20分間入浴した場合と、42℃の湯に30分間足浴した場合に大きな差はなさそうなので、足浴でも十分な効果があると言えます。

ミストサウナの効果とメリット

近年開発され、家庭への設置数が増加傾向にある低温・高湿で全身を温めるミストサウナ入浴は、全身入浴と差がありませんでしたが、第一周期ノンレム睡眠時のデルタパワーが増加していました。


ミストサウナは低温のために身体への負担が少ないので、介護環境等で役立ちそうです。

アイススラリーの効果

アイススラリーは氷よりも流動性があり、水よりも冷却能力があるので、効果的に体を冷やすことができます。熱中症対策として利用されていますが、熱帯夜などでは睡眠を促進することができます。例えば、ポカリスエットアイススラリーがあります。

以下の記事はアイススラリーを利用した睡眠環境の改善という研究論文を引用・参考にしています。

睡眠前にアイススラリーを摂取した場合と、摂取しない場合で比較を行いました。その結果、睡眠時間には有意な差はありませんでした。しかし、就寝時気温が高いときほどアイススラリー摂取時の深い睡眠がより長く得られたのです。

コメント

  1. […] 深部体温を下げ、皮膚温度との差を縮める […]

  2. […] 深部体温を下げ、皮膚温度との差を縮めるでも記述していますように、深部体温の24時間周期で起こる変動は、皮膚からの熱放散によって制御されており、熱放散によって深部体温が下がると睡眠が誘発されます。 体から熱が放出されないと眠れないのは、熱帯夜では眠りにくいという経験からもわかるでしょう。冬の時期、寝具が体の熱を逃がさないようにすることは寝具の役割ですが、度が過ぎると逆効果となります。では、何℃が最適温度なのでしょうか。 […]

  3. […] お風呂に入る […]